−レッツ☆ウォー− 


たんい☆戦争(2006.12.23)

 その日、放課後の掃除中に話は振られた。二つに長い髪を結い、長いT字の箒を手にした双葉は真剣にゴミを掃いていた。そして、しゃがみ込み膝に着いた肘に顎を乗せ、俺はちりとりに掃き入れられるゴミを見ていた。
「いっちゃん、長さの単位は何?」
 開戦。分かりきったことを聞く場合、大抵いくつか続けた後に本命が来る。良くあるパターンだと踏み、俺は素っ気なく答えてやる。
「『メートル』。その前に『キロ』『センチ』『ミリ』『ナノ』『マイクロ』が付く場合もある」
「じゃあ、重さは?」
 思った通り、質問は続く。
「『グラム』。同じく前に『キロ』や『ミリ』が付く。場合によっては『トン』とも言う」
「体積」
「『リットル』か。『キロリットル』『デシリットル』『ミリリットル』……だったと思う」
「じゅあいっちゃん……愛に単位はあると思う?」
 やっと来た本命。しかも、双葉がそんな……誰か、代わって下さい。ぼくには答えられません。ファンクラブのテロが恐いです。ぶっちゃけ、答えが分からないどころか考えたくないです。
 ちりとりを見ているはずの俺の目は、地球の裏とか、どこか遠くを眺めていた。
「……目に見えない物は数えられない、から、単位なんてないんじゃないか……な」
 喉に包丁でも当てられた人質並に声が震える。だが、執拗に双葉は追撃してくる。ダレカ、オレヲコロシテ。
「風の強さは測れるわ」
 そのセリフに、ちりとりを置いて俺は立ち上がる。そして、少し下にある奴の目を覗き込んだ。ファンクラブのテロなんてもう知らない。頭に手を乗せて子供扱いをする。忌々しいものを見るような視線が体に痛いぜ。
「……一体どうしたんだ? また誰かに何か言われた?」
「……詩人さんが……」
「殺すっ! 山口はマヂで殺すっ!!」
「馬鹿野郎っ! 双葉ちゃんの前で刺激が強い言葉を使うなっ!」
 背後で罵声×2。双葉の告白に、ファンクラブ会員だろう誰かの死刑宣告、そして主席・源氏の叱責が続く。
 ちなみに、源氏のやつは机を二列跳び越えて双葉の耳を押さえに来るという快挙を成し遂げた。源氏主席はきょとんとしている双葉にニッコリ微笑んで、「うるさくして失礼しましたv」と会員を引き連れ出て行く。山口に再び危機が訪れる。
 ……ねぇ、双葉さん。もう奴と口を利くのは止めて下さい。俺の精神が持ちません。

☆ 本日の試合結果。たんい勝利。


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